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- 製品関連2026/09/30
- 抗老化ホルモンKlothoの多彩な機能と健康寿命延伸への期待
本IBLニュースで紹介している当社の製品は、研究用試薬であり、診断や医療目的に用いることはできません。老化研究の分野では、加齢に伴うさまざまな疾患やフレイルとの関連から、Klotho(クロトー)が大きな注目を集めています。Klothoは老化に関連する遺伝子として発見され、その後の研究により、可溶型のα-Klotho(soluble α-Klotho)はリン・カルシウム代謝の調節に加え、抗酸化作用、抗炎症作用、抗線維化作用、神経保護作用など、多彩な生理機能を持つ「抗老化ホルモン」であることが明らかになってきました。
弊社では2025年6月に、このsoluble α-Klothoに関するセミナーを開催し、近年の研究知見を解説いたしました。今回ご紹介する「Diverse Functions of an Anti-Aging Hormone, Klotho」(IBL-America, USA)では、本セミナーで取り上げた内容を中心に、Klothoの基本的な生理機能から、soluble α-Klothoの測定技術、さらに大規模コホート研究によって明らかになった加齢関連疾患との関連や、運動・食事・薬剤・セノリティクスが血中soluble α-Klotho濃度に及ぼす影響まで、近年の研究成果を含む幅広い知見を分かりやすく要約しています。
以下、その概要をご紹介します。
老化研究の転機となったKlothoの発見
Klotho(クロトー)遺伝子は1997年に発見された老化関連遺伝子です。その名称は、ギリシャ神話で生命の糸を紡ぐ運命の女神「Clotho」に由来します。Klotho遺伝子の発現が障害されたマウスでは、動脈硬化、骨粗鬆症、皮膚萎縮、異所性石灰化など、ヒトの老化に類似したさまざまな病態が短期間で出現し、寿命も著しく短縮することが報告されました。一方、Klothoを過剰発現するマウスでは寿命延長が認められており、Klothoが老化の進行に深く関与することが示されています。
腎臓で働くKlothoの基本機能
α-Klothoは主に腎尿細管細胞に発現する膜タンパク質で、FGF23の共受容体として機能します。FGF23と協調してリンの再吸収を抑制するとともに、活性型ビタミンDの産生も調節し、リン・カルシウム代謝の恒常性維持に重要な役割を果たしています。Klotho欠損マウスでは高リン血症がみられ、低リン食によって老化様症状が改善することから、Klothoが担うリン代謝制御は老化現象とも密接に関連していると考えられています。
soluble α-Klothoが「抗老化ホルモン」と呼ばれる理由
膜貫通型α-Klothoの細胞外領域は切断され、血液中へ放出されます。可溶型であるsoluble α-Klothoは全身を循環し、多様な組織や臓器に作用することから、「抗老化ホルモン」として注目されています。少量サンプルで定量できるELISAが開発され(1)、血中soluble α-Klotho濃度が加齢とともに低下することが明らかとなりました。腎機能低下との関連も報告されています。
抗酸化作用による細胞保護
加齢に伴って増加する酸化ストレスは、動脈硬化や心血管疾患など、さまざまな老化関連疾患に関与すると考えられています。KlothoはFoxO経路やNrf2経路を活性化し、SODやHO-1などの抗酸化酵素の発現を促進することで、活性酸素による細胞障害を抑制します。こうした作用は、酸化ストレスから細胞を保護する機構の一つと考えられています。
抗炎症作用と抗線維化作用
慢性炎症は老化の重要な推進因子と考えられています。KlothoはNF-κBの活性化を抑制し、TNF-αやIL-6などの炎症性サイトカイン産生を低下させることが示されています。COPDのin vitroモデルでは、マウス肺胞マクロファージを用いた実験で、タバコ煙抽出物による炎症性サイトカイン産生をKlothoが抑制することが報告されています。
さらにKlothoはTGF-βシグナルを阻害することで、筋線維芽細胞への分化やコラーゲン産生を抑制し、肺や肝臓、腎臓などでみられる病的な線維化の進行抑制に寄与すると考えられています。
がん抑制や神経保護への可能性
Klothoには腫瘍抑制作用も報告されています。膵がん細胞の培養系では細胞増殖が抑制され、膵がん細胞を移植したマウスにKlothoを投与した研究でも、非投与対照群と比較して腫瘍サイズの減少が認められました。その作用にはIGFシグナルやFGFシグナルの抑制が関与すると考えられています。
また、神経保護作用も注目されています。平均年齢21.8歳の高齢アカゲザルに組換えKlothoを単回投与した研究では、投与4時間後に認知機能の改善が認められ、その効果は14~23日後にも観察されました。Klothoを標的とした遺伝子治療や細胞治療の開発も進められており、神経変性疾患領域での応用が期待されています。
NHANES研究が示したKlothoの臨床的意義
CDC(米国疾病予防管理センター)が実施する米国国民健康・栄養調査(NHANES)では、2007~2016年に収集された13,000例以上の血清サンプルでsoluble α-Klotho濃度が測定され、その後130報を超える研究論文が報告されています。これらの解析から、血中soluble α-Klotho低値は炎症指標の上昇、心不全や心筋梗塞などの心血管疾患(2)、変形性関節症(3)、フレイル(4)、筋肉量低下(5)、さらには死亡リスク上昇と関連することが示されています(6)。
また、実年齢ではなく身体機能や検査値から算出される「表現型年齢」との関連も検討されています。soluble α-Klotho濃度と老化速度の関係にはU字型の関連が認められましたが、多くの被験者が属する1,000 pg/mL未満の範囲では、soluble α-Klotho濃度が低いほど表現型老化の進行が速い傾向が観察されました(7)。
今後は、Klotho低下が疾患の発症や進展に関与するのか、あるいは疾患によってKlothoが低下するのかといった因果関係の解明が期待されます。
Klotho低下が生み出す「負のスパイラル」
本学術記事では、Klotho低下と老化関連疾患が互いに影響し合う「負のスパイラル」が重要な概念として紹介されています。加齢に伴い血中soluble α-Klotho濃度は低下します。Klotho低下は腎疾患、糖尿病、心血管疾患などのリスク上昇と関連しています。こうした老化関連疾患には慢性炎症や炎症性サイトカインの産生を伴うものがあり、炎症性サイトカインはKlotho遺伝子発現を抑制し、血中soluble α-Klotho濃度をさらに低下させます。この悪循環が老化の加速や寿命短縮につながる可能性が示唆されています。
Klothoと生活習慣・治療介入との関連
この負のスパイラルに対するアプローチとして、生活習慣や治療介入の研究が進められています。運動では、一過性のレジスタンス運動による血中soluble α-Klothoの上昇(8)や、アスリートでの高いsoluble α-Klotho濃度(9)が報告されています。また、抗炎症性の高い食事(10)、食物繊維摂取(11)、地中海食(12)への高い遵守度は、いずれも高いsoluble α-Klotho濃度と関連していました。さらに、肥満から非肥満へと体重を減少させた人では、減量幅が大きいほどsoluble α-Klotho濃度が高くなる傾向も示されています。
薬剤では、ロサルタン(13)をはじめとするARBやフルバスタチン、ビタミンDなどでKlotho増加作用が報告されています。また、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬、メトホルミン、PPAR-γ作動薬などの糖尿病治療薬についても、動物実験でKlotho増加作用が報告されています(14)。加えて、老化細胞を除去するセノリティクスにも注目が集まっています。ダサチニブとケルセチン、あるいはフィセチンを用いた研究では、老化細胞の除去に伴うKlotho増加が報告されています。また、ダサチニブとケルセチンを用いたヒト臨床試験(15)でも、尿中Klothoの増加が報告されています。
おわりに
Klothoは、FGF23の共受容体としてリンなどのミネラル代謝を調節する機能に加え、抗酸化作用、抗炎症作用、抗線維化作用、腫瘍抑制作用、神経保護作用などを有する多機能な抗老化ホルモンとして認識されています。血中soluble α-Klotho濃度は、さまざまな加齢関連疾患やフレイル、死亡リスクとの関連が示されており、これらに関連するバイオマーカーとしても注目されています。さらに、運動や食事改善、薬物療法、セノリティクス、さらには遺伝子治療まで、Klothoを高める可能性のある多様なアプローチが研究されています(16)。
健康寿命の延伸という長年の課題に対し、Klothoを活用した研究や応用のさらなる発展が期待されます。
詳しくは下記よりご参照ください。
Diverse Functions of an Anti-Aging Hormone, Klotho
(IBL-America, USA)
参考文献
1 Yamazaki Y et al. Biochem Biophys Res Commun. 2010. PMID: 20599764
2 Xu JP et al. Front Cardiovasc Med. 2022. PMID: 35795366
3 Qiu Y et al. PLoS One. 2024. PMID: 39556550
4 Yuan M et al. Am J Transl Res. 2024. PMID: 39114692
5 Xie Y et al. Front Nutr. 2024. PMID: 38854159
6 Sadr N et al. Br J Clin Pharmacol. 2024. PMID: 39165068
7 Li H et al. BMC Geriatr. 2023. PMID: 38017397
8 Morishima T and Ochi E. Physiol Rep. 2021. PMID: 34713986
9 Mostafidi E et al. Nephrourol Mon. 2016. PMID: 26981496
10 Ma TC et al. Front Nutr. 2022. PMID: 35619959
11 Liu S et al. Nutrients. 2023. PMID: 37513564
12 Wu SE et al. Nutrients. 2022. PMID: 36235560
13 Lim SC et al. Renin Angiotensin Aldosterone Syst. 2014. PMID: 23380567
14 Prud'homme GJ et al. Front Aging. 2022. PMID: 35903083
15 Zhu Y et al. EBioMedicine. 2022. PMID: 35292270
16 Castner SA et al. Nat Aging. 2023. PMID: 37400721
当社では α-Klotho を含む腎疾患および老化関連の ELISAキット を豊富に取り揃えており、検査サービス も行っております。
皆様の研究活動にお役立て頂ければ幸いです。
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抗体関連事業本部 営業部
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