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- 製品関連2025/11/19
- 【論文紹介】GLP-1受容体作動薬であるエクセンディン-4のコレステロール低下作用
本IBLニュースで紹介している当社の製品は、研究用試薬であり、診断や医療目的に用いることはできません。名古屋大学 環境医学研究所 内分泌代謝分野 講師 堀美香 先生、東京女子医科大学 糖尿病・代謝内科 長谷川夕希子 先生 らの研究グループは、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬であるエクセンディン-4が、血中コレステロールを急性に低下させるメカニズムについて報告しました。
GLP-1受動態作動薬は、血糖値を調節するインクレチンホルモンであるGLP-1の作用を模倣した薬剤であり、膵臓に働いてインスリンやグルカゴンの分泌を調節するほか、消化管や中枢神経系に作用し、満腹感や食欲を制御することなどが知られています。
一方で、本論文の著者らは、以前に、GLP-1受動態作動薬が2型糖尿病患者の血中コレステロールを低下させることを報告しています。
この論文ではLdlr−/−マウス(LDL受容体欠損マウス)およびC57BL/6Jマウスに対して、エクセンディン-4を5日間投与し、血清リポタンパク質プロファイル、コレステロール代謝関連遺伝子の発現およびタンパク質レベルの変動を評価しています。これらの解析を通じて、コレステロール低下作用に対するLDL受容体の寄与を明らかにするとともに、LDL受容体非依存的な作用機序の存在についても検討しています。
■主な研究成果
Ldlr−/−マウスおよびC57BL/6Jマウスにおいて明らかになったエクセンディン-4の効果は以下のとおりです。
1)両マウス系統共通
・血清中の超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDL-C)および低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の減少
・肝臓におけるコレステロール合成の主要転写因子である成熟型SREBP2の低下
・SREBP2の活性化を抑制するINSIG1*1およびINSIG2*2の肝臓におけるmRNAの発現増加
2)Ldlr−/−マウスのみ
・肝コレステロール値の低下
・糞便中胆汁酸排泄量の減少
・肝Cyp7a1*3 mRNA発現の低下
・小腸Fgf15*4 mRNA発現の増加
3)C57BL/6Jマウスのみ
・腸管でのコレステロール吸収に関与するNPC1L1*5タンパク質の減少
このように、Ldlr−/−マウスおよびC57BL/6Jマウスの両系統において、VLDL-CおよびLDL-Cの減少が認められ、エクセンディン-4はLDL受容体に依存せずに血清コレステロールを調節していることが明らかになりました。また、マウス系統ごとに異なるメカニズムでコレステロール吸収を抑制する可能性が示唆されました。
本研究は、LDL受容体機能不全を伴う脂質異常症患者に対して、GLP-1受容体作動薬が新たな治療選択となり得る可能性を示唆する、重要な知見を提供しています。
詳しくは下記よりご参照ください。
Mika Hori et al.
Acute Cholesterol-Lowering Effect of Exendin-4 in Ldlr-/- and C57BL/6J Mice
J Atheroscler Thromb. 2023; 30:74-86.
本論文では、当社のGP-HPLC法によるリポタンパク質・脂質プロファイル解析サービス(LipoSEARCH®)が採用されています。
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(参考)
*1 INSIG1(Insulin-induced gene 1)
INSIG1は小胞体でSCAPと結合し、SREBPの活性化を阻止して脂質合成遺伝子の転写を抑制します。また、E3ユビキチンリガーゼと協調してHMGCRのユビキチン化と分解を促進し、コレステロール合成を抑制します。
*2 INSIG2(Insulin-induced gene 2)
INSIG2は小胞体でSCAPと結合し、SREBP/SCAP複合体のゴルジ体移行を阻止して脂質合成を抑制します。肝臓で高発現し、絶食時にはPPARαによりINSIG2の発現が誘導されます。酸化ステロールによりSCAPとの結合が強化され、SREBP活性が抑制されます。
*3 CYP7A1(Cholesterol 7α-hydroxylase)
CYP7A1は肝臓でコレステロールを胆汁酸に変換する律速酵素であり、コレステロールの代謝と排泄に寄与します。胆汁酸により活性化された小腸の核内受容体であるFXRはFGF15/19を誘導し、これが肝臓でCyp7a1の転写を抑制することで、胆汁酸の恒常性を維持します。
*4 FGF15(Fibroblast Growth Factor 15)
FGF15は小腸で胆汁酸により活性化されたFXRを介して誘導され、肝臓でCyp7a1の転写を抑制します。胆汁酸合成の負のフィードバック機構を担い、FGFR4経路を介して脂質・糖代謝の調節にも関与します。
*5 NPC1L1(Niemann-Pick C1-Like 1)
NPC1L1は小腸で食事由来および胆汁由来のコレステロール吸収を担います。肝臓では胆汁中コレステロールの再取り込みへの関与が示唆されています。エゼチミブはNPC1L1を阻害し、血中LDLコレステロールを低下させます。
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